全学共通の安定した無線LAN環境を構築
利用のしやすさと運用・管理の効率化を両立

東京大学 様
  • 業種:教育
  • 人数規模:5,001人以上
  • 提供内容:ネットワーク機器、ネットワーク設計/構築、設置工事
  • 導入機器:Juniper Mist(無線LANアクセスポイント)7,500台 他
  • URL:https://www.u-tokyo.ac.jp/

概要

国内外で高い評価を受けている研究教育機関の東京大学。1877年に設立された同学では、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン授業が急速に普及したことで、学内ネットワーク環境の見直しが急務となりました。そこで、広大な敷地内に安定した無線LAN環境を整備するために、ソフトバンクとそのグループ会社であるSBエンジニアリングが提案した Juniper社のMistを採用し、複数の部局で管理できるシステムを構築。管理・運用にかかる負荷の分散やネットワークの可視化を実現して学部をまたいだ安定した接続を可能にしたことで、学生は他学部や離れたキャンパスなどの幅広い履修が可能になりました。

導入前の課題           

①新型コロナウイルスの影響でオンライン授業対応が急務となり、学内ネットワーク環境の見直しが必要となった。

全国に広大な敷地を保有していて、運用管理の分担が必須であった。

導入後の効果

①全学で安定したネットワークを利用できるようになったことで、学生は幅広い履修が可能になった。

②Mistを導入したこと部局ごとに管理者権限を付与でき、100名以上の部局担当者がログインして管理できるネットワーク構築ができた。

「今まではユーザーからつながらないと言われてもなかなか対応が難しかったのですが、Mistでは部局の人達もログインでき、可視化された通信のステータスも分かりやすいため、問題を解決できるようになりました」

 

東京大学 情報基盤センター ネットワーク研究部門 准教授 中村 遼 氏

 

施設や人数が大規模である中、部局ごとに管理が分散

 1877年に国立大学として設立した東京大学は、日本の高等教育と研究の中心的存在として発展し、国内外で高い評価を受けています。その施設は東京の本郷、駒場、白金台、千葉の柏などのキャンパスに加えて、全国に多くの研究所も保持し、約2.9万人の学生と約2万人の教職員などが所属しています。コロナ禍を経て、元々は教室で行っていた授業もオンライン授業がスタンダードになり、学内のネットワーク環境を見直すことになったと、情報システム本部 副本部長の玉造氏は言います。

「東京大学は学部ごとに部局という組織に分かれていて、元々は部局ごとにさまざまな無線LANを運用していました。そのため、学部(部局)をまたぐと利用できないという問題があり、2015年頃からは教室と学部室では学内の共通インフラを利用するようになっていたのですが、これを全学(大学全体)に広げたいと話していました。検討しているタイミングで新型コロナウイルス感染症が流行し、オンラインの活用が急速に拡がったことから全学への早期導入を進めることになりました」(玉造氏)

 そこで、2021年春頃から要件定義を開始し、秋頃には机上調査や現地調査を行いソフトバンク、SBエンジニアリングと共に準備を進めていきました。東京大学には559棟の利用棟や1,030ものフロアがあり、まずはこれら全てにアクセスポイント(以下:AP)を設置できるかの確認から進めていきました。

「予算の範囲内で適切に事前調査をして進めていくことが非常に重要なポイントでした。机上調査で平面図を見て『ここにこれだけ置けばよいね』と話していても、いざ現地調査してみると置けないことがあるので、実際に(現地調査で)設置場所を見ながら進めていきました」(玉造氏) 

 

環境構築の決め手はMistの管理権限の移譲

 日本最大級の無線LAN環境の構築プロジェクトになるため、多くの関係者との調整や工程計画、スケジュール管理などが必要でした。SBエンジニアリングがプロジェクトマネジメントを行い、分担して詳細に要件定義を行いつつ、複数部門で分科会を行うなど、関係者と連携しながら進めていきました。入札ではどういう機材を選ぶかを含めた提案が求められ、ソフトバンクはJuniper社のMistを提案。見事採択されました。情報基盤センターのネットワーク研究部門で准教授を務める中村氏は、Mistのよさについて次のように語りました。

 「東京大学では組織(部局)ごとにシステム管理者も分かれています。今回の全学への無線LAN導入に関わっているのは数名程度だったので、その体制でメインキャンパスに加えて遠隔地にまで導入・運用していくことは困難だと感じていました。そのため、部局の管理者の方々にも無線LAN管理を担っていただく必要があると考えて、各部局の人たちにそれぞれ利用できる権限範囲を定めて運用できるシステムが必要でした。その条件に合致したのがMistでした。実際に100名近くの管理者がMistのシステムに入れるようになっています」(中村氏)

 Mistのよさはロールごとに管理権限を移譲できるところだと中村氏は続けます。

「Mistにはロケーションマップの機能があり、フロアの図面上にAPの位置が表示され、各APに何人ぐらいが今つながっているかも可視化されて分かるようになりました。今まではユーザーから『つながらないです』と言われてもなかなか対応するのが難しかったのですが、ステータスがどういう状況かすぐに確認できるようになったことは大きいと思っています。この機能そのものは多くの製品にあるものの、大切だったのは各部局の方々がログインできて、自分たちで確認できる使いやすいUI(ユーザーインターフェイス)のデザインだったり、そのUIにも管理者権限が設定できるところでした」(中村氏)

設置されたMist

工事でも分担がポイントに

 敷地面積が158万平方メートル(東京ドーム50個分)にもなる東京大学では、設置するAPも約7,500台と膨大な数になりました。これほどの数の導入工事は、進め方でも「分担」がポイントであったとは語ります。

「今回のプロジェクトは大規模であるため、部局側と全学でやるべき部分を分担してやらないと破綻してしまうと考えていました。そのため、機器(Mist)の設置工事側にも『分担できる』というところを求めて進めました。しかし、現場でできる判断を分担しつつも個別対応し過ぎるとバラバラになってしまうので、大学全体としての管理と各部局の管理をSBエンジニアリングさんを中心に、ソフトバンクさん側で上手く現場と擦り合わせて工事を進めてもらいました」(玉造氏)

「遠隔地では場所によってネットワーク構成が異なります。物理的には離れているため直接確認できないだけでなく、現地にネットワークが詳しい人がいないという状況でした。そういう場所でも現地にヒアリングして確認し、どのような構成にするかを提案してもらえた点もよかったと思っています」(中村氏)

 プロジェクトを進めるにあたって、他社では断られるような問題に対しても、ソフトバンクさんだと持ち帰って相談しますねと言ってくれたところはありがたかったと、玉造氏は述べました。

 

距離にとらわれずオンラインでの幅広い履修が可能に

 現在はピークで2万クライアントが同時接続し、アクティブなクライアントが1週間で20万以上で接続されています。ラップトップやスマートフォンなど複数のデバイスで利用されており、この規模を1つのシステムでさばけていることもポイントであると中村氏は語りました。

 また、このような環境が整い、学生の履修にも変化がでてきたと玉造氏は言います。

 

「コロナ禍以降、授業の開催形態が変わりました。元々生徒は教室に行って授業を受けていましたが、今は、後期の専門課程になるほどオンライン授業との併用になっていて、他学部の授業も受けられるようになっています。以前であれば、本郷と駒場のキャンパス間を1時間弱かけて移動しなければ授業を受けられなかったりもしたのですが、無線LANとオンライン授業の環境が整ってきたことで、今まで履修できなかったものが受けられるようになり、今の学生はその環境を標準として幅広い履修計画を立てているように感じています」

 

東京大学 情報システム本部 副本部長 准教授(情報システム担当)玉造 潤史氏

 

 ITを活用して教育を持続させていきたい

学生や教職員の目線に立ってITインフラの強化を進めている東京大学では、学生や教職員へITツールをワンストップサービスとして提供できる仕組み作りにも取り組んでいるようです。

「現在、各部局のシステム担当者が行っていることをワンストップでサービス提供することが我々の最大目標でもあります。そのために、uteleconというITを活用して教育を持続させるためにWebサイトを立ち上げています。また大学として、Microsoft や Google、Slack や Zoomなどの各種サービスのアカウントを全ユーザーに配布していて、そうしたインフラサービスの1つとして今回の無線LANがあります。

 今回、Juniper社のMistを利用して無線LANの管理者権限を各部局ごとに配布し、問題が起こったときには管理者のSlackチャネルから全学の管理者へ相談できる体制を作れたということは大きな意味があります。ユーザーからしてみると、東京大学のITインフラサービスのコンポーネントの1つでしかありませんが、無線LANを階層的に運用管理できるようにしてユーザーへ提供できたことはよかったと思っています」(玉造氏)

 利用者のITツール活用を支えていくために、東京大学では必要なものはすべからく提供していき、将来の大学を見据えて何をやっていくかを考えていきたいと締めくくりました。

インタビュー風景